"仮説と検証"って

先日開催したPOMeetupで、「仮説と検証」のキーワードがテーマとして登場したが、私としても近頃とても気になってるテーマなので整理してみようと思う。
 
私なりの「仮説って何だろう」とは
  • このゴールを得るために、こうすれば近づけそう
  • このアクションによって、こういう成果がでるだろう
  • そして、仮説は間違ってるかもしれない
当たり前のことだ。
しかし、悩んだ末にひと回りしてここにたどり着いた。
 
かつて事業リーダーになったときの話。
とつぜんの組織変更&辞令で、それまで一緒だったチームと新しい事業グループを任された。このとき、会社のいろいろな事情により、新規受注を大幅に獲得しなければならなかった。これまでにシステム提案や予算の交渉くらいはしたことあるが、新規顧客の営業なんてしたことない。
しかし、アジャイルな開発を実践してきた経験から、少しずつ結果を出しながら軌道修正していけばいいと考えた。いま思い返してもこれはたぶん間違いではない。しかし、なんども軌道修正しながら、いろんな手を尽くしてきたが、ほとんど成果はなかった。ふりかえれば、確かに細かく軌道修正してはいたが、どこに向かうやも知れず、まるで巨大な迷路で迷っているようなものだった。あるいは、目印のない砂漠をさまよっていたとも言える。
 
当時から徐々にリーン・スタートアップといった単語を目にするようになっていて、私なりにやり方を踏襲しようとしていた。しかし、そこで聞かれる事例はどこか自分と違う世界の出来事のようで、先の砂漠に例えると、どこか彼方のオアシス周りの街であちらこちらと新ビジネスが出たり消えたり浮き沈みをしているようだった。それなのに、私たちは体力だけを頼りに砂漠の中をさまよっている。私たちの手元には、ビジネスの種になる品物も客もいないような気分だった。
 
役目を終えてみてはじめて本格的に振り返ることができる。
簡単に言えば、目的意識やゴールに対する狙いが甘かったんだろう。「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれない。たしかに、ごくありきたりなダメケースだ。
当時の私は「目的は"受注を増やす"ことだ」と明確なつもりだった。ただ、「どうすればいいかわからない」ので手探りで進めていた。
 
「受注を増やす」は大命題であっても戦略目標ではない。これでは「増やす」ためなら、どんな選択肢だって取りうることになる。自分の中では「こういう課題を持つ顧客を探してこういう有価値なものを提供したい」と考えていても、周囲から(特に経営陣から)「訪問件数を稼げ」といった目先のアクションにプレッシャーがかけられたら、そちらを優先してしまう。'これ'という選択がないので、あれもこれもと目先を変えながら右往左往することになる。さらに、小刻みに再計画しているので、あたかも'ちゃんとやってる'つもりになっていたようにも思う。
はた目には馬鹿げた迷走っぷりだけど、やってる本人は必死だった。目標がボケてることは気づいていたが、全力で走っている間は、ふりかえっているつもりで何も対策できなかった。
 
このように整理してみると、このように陥らないために必要なのは、戦略を絞って、目標を立てて行動計画を立てることだとハッキリわかる。
「その戦略が難しいんだ」と当時の私は反論するだろう。
だからこそ、"仮説"というアプローチが活きる。なんとなく思い描いている抽象的なビジョン(想い)から、具体的な目的に絞ってみる。自分が描ける範囲の(あるいは、何人かの助けを借りて)目標を定め、修正または取り替えていくつもりで実行すればいいのだろう。「難しい」と言っても、想像もできないようなビジネスモデルは構築しようがなく、本当に難しいのは事業を完成させることだろうから。
 
  • このゴールを得るために、こうすれば近づけそう
  • このアクションによって、こういう成果がでるだろう
  • そして、仮説は間違ってるかもしれない
小さく繰り返す実行に加え、もう少し長いスパンで、達成から得られた成果から目的や施策も見直す。このような2重ループ構造で運用することで、右往左往する失敗から回避する手段になるのではないかと考えている。
 
いま同じように私の代替で後任者が全力で走っている(走らされている)。同じように迷走して疲れ果ててしまわないよう、なんとかこのあたりをうまく伝えることができないか、と思う。