アジャイルにやるなら評価も考えてほしい

ちかごろアジャイルと人事評価がホットな感じになってきてるので、便乗してそのあたりの個人的な意見を。

 

私がアジャイルの導入支援するとき、比較的早い段階でクライアントのチームの人に仕事がどう評価されるのか尋ねてみます。仕事のやり方を変えようってときにそれが個人への評価に反映されるかどうかって、とても重要なことですよね。別にそれによって私がコーチとして何かを判断するわけではないですが、これから一緒に工夫していく仲間としてメンバーそれぞれの動機や個人ビジョンって気になりますから。

多くの人は「うーん、結果が出れば評価されるかもしれない」というあいまいな感じで、中には「たぶん、まったくリンクしないと思います」という話も。そういう場合、どうしてもチームとして変化が出るのに時間がかかってしまうので、上司にあたる人物と話をすることにしています。

 

自分がどう評価されるかが以前と変わりないままだと、「これからはアジャイルでやるよ」が意味するところは「業務の手順が変わる」くらいになっちゃいます。そうすると個人にとって大切なのは、ルールを守ったか、自分のタスクを間違いなくやったか、頑張ったか、人に迷惑をかけなかったか...みたいなところになって、問題がそこにあっても見ないふりをしちゃうんですよね。"アジャイル風"に動くことが目的になって、アジャイルな感じにならないし良い成果も見えにくい。もちろん、現実は新しいことにワクワクしてくれてる人が多いですが、それでもヤバい問題やシンドい体験をすることになるので、そのときに自分の正しさを守れる領域がどこにあるのかが行動の基準になります。

 

アジャイルを導入しようと声を上げた人、その新しい風を吹き込ませた人は、ただ ”アジャイルであること” が目的ではなかったと思います。"アジャイル"にめぐりあうに至ったときの課題意識、チームの働き方を変えていこうと考えたとき理由があったのではないでしょうか。

  • 機敏に対応できる遂行力を持ちたい
  • チームワークに可能性を感じる 1+1を2以上にしていきたい
  • メンバが成長してほしい、育成したい

などなど、実際はもっと具体的な理由があると思います。

大切なのは、それをメンバーの人たちに伝えているでしょうか? 仲間の人たちはそれを理解しているでしょうか? それに皆が共感し目的を共有できたら、それは楽しい現場になると思います。

まずは「どこに向かっているのか」を明確なメッセージとして言葉にするよう気にしてみてください。何度どなく。レビューやふりかえり、イテレーションの計画づくりやデイリーミーティングでも、そういう話をする機会は沢山あります。目的に合致した行動は称え、そうでない行動はどう防ぐか(批難ではなく)に注目して発言するだけで、ずいぶんと変わってきます。

 

いきなり査定制度を変えようってのは、きっとどの組織でもムリがある話です。ゲームに懸賞を与えたら成績が下がったという事例もあるので、必ずしも制度を変えることが良いことではないかもしれません。でも、マネージャなりリーダーなりであれば少なからずメンバーは目を気にしてるし、査定評価でなくても普段の会話から感じる範囲でも十分かもしれません。そこに小さな違いでもいいので「正当に評価されている」という実感を持ってもらえるよう考えてみるのがいいと思います。